電波の間

約2年前のことだ。スマートフォンのバッテリーが劣化してきたので、携帯ショップで機種交換を決断することになった。
店員から機種やプランの説明を受けた後、店員が切り出してきた。「ところで、ご自宅のインターネット環境はどうされていますか？私たちのプランを同時に契約していただきますと、スマートフォンの機種割引や使用料金の割引が受けられますよ。」当時、私が利用していたのは光回線のインターネット接続で、ただ、Wi-Fiルーターとの相性が悪く、かなり遅いと感じていた。そこで、詳しく内容を聞いてみると、「ウチでお勧めしているのはAirですね。回線工事も不要で簡単に接続できますよ。「Airってモバイル回線を使うやつでしょ？速度遅いんじゃないの？」と尋ねると、「私も自宅で使っているんですけどね、そんなに遅いと感じたことないですよ、それに5G対応ですし」との回答があった。５G！・・・・。当時は５Gが出始めた頃だったので、その新鮮な響きに一気に魅了されてしまった。「ちなみに僕の自宅は5Gで使えるの？」と聞くと、「え～っと、お客様のご自宅は・・・まだ対応してませんね。でも、札幌市内は順次5Gに切り替え予定ですので、近いうちに5Gになりますよ。」こう言われてしまってはもう気持ちが抑えられない。クリスマスに最新のゲーム機を買ってもらえる約束を取り付けた子供の気分ですぐに契約した。
しかし、1年経ってもランプは緑色のままだった。「なぜだろう？やはり再起動が必要なのだろうか？」時折、Wi-Fiの再起動を試みるも、相変わらずランプは緑色のままだった。痺れを切らした私はホームページで5Gの対応エリアを調べてみることにした。すると、なんということだろう。自宅のエリアは5Gを表す赤で塗りつぶされているではないか。では、なぜ5Gに切り替わらないのだろう？そう思いながらエリアマップを見ていると、我が家の周りだけなにかモヤモヤとして見える感じがした。まさかと思い、画面を拡大してみるとなんと雲がかかったようにムラになっているではないか。それは我が家の周辺のみ５G対応エリアではないことを示していた。

どういう事情でこのような事になるかはわからないが、我が家が建っているのは山裾にちかい場所なので、電波が届きずらいのかもしれない。以前住んでいたマンションも山裾で、その一帯だけTVの周波数が違うということもあった。電波が届きづらい場所があるというのは認識していたが、こうも見せつけられるとなんともショックである。
あれから1年近くが経過したが、ランプは緑色のままである。さっさと解約してしまって別のプランに変えてしまっても良いのだが、なぜか明日にはランプの色が変わるのではないかと思いながら今日に至っている。
電波とは目には見えないものだが、現代社会においては無くてはならないものである。いつか我が家の電波状況が改善されるのを祈りながら、今日もランプを見つめ続ける毎日である。